1.原因不明の嘔吐は動物病院へ
愛犬が嘔吐したときは、まず、長い空腹時間がないか、あるいはガツガツと勢いよく食べていなかったか確認してください。
犬は胃酸の分泌量が多いため、空腹が長く続くと胃粘膜に負担をかけないように胃液を吐くことがあります。また、食べ物を丸呑みする習性があり、うまく飲み込みめず嘔吐することも珍しくありません。
上記の場合は、食事の時間や量の調整などで済みますが、原因不明の嘔吐は命に関わる可能性もありますので、早急に受診しましょう。
ここからは、犬が吐く原因や対処法について説明しますが、処置の際は必ず獣医師の指示を仰ぎましょう。
2.異物誤飲による嘔吐
犬は異物誤飲の事故が多く、ときには驚くほど大きなものを誤飲することもあるため、愛犬の口に入るサイズのものは厳重に管理しましょう。
①.症状
異物誤飲による嘔吐は、下痢や食欲不振、元気消失、呼吸困難などの症状がみられます。
何も食べていないのに口をパクパクする、何度もえづくが胃液しか出ない、などは異物誤飲の可能性が高いといえます。
食道や胃、腸内など消化管内に異物がとどまると、最悪の場合、腸閉塞や気道閉塞による窒息などを起こす危険があります。
②.原因
おもちゃ、骨、石、布、ビニール、果物の種、電池などの誤飲が多く報告されています。
特に、ガムとしてよく与えられている骨や軟骨は誤飲の原因になりやすく、愛犬に合ったサイズや固さを選ぶように気を付けましょう。
③.対処法
早急に動物病院を受診し、異物を取り出す処置を行います。
嘔吐を促す処置を取ることもありますが、見えている場合にはピンセット等の方法で取り除きます。また、誤飲物によってはX線検査や、バリウム検査などが必要となり、内視鏡での処置や外科手術が必要です。
また、すでに呼吸困難を起こしているなど、一刻を争う場合は、飼い主さん自身で処置を行うように獣医から指示されることもあります。明らかに病状が悪い場合は、動物病院に向かう前に電話して指示を仰ぎましょう。
【異物誤飲時の応急処置】
- 犬の舌を引き出し、ピンセットで異物をゆっくりと取り除く
- 小型犬は頭を下にして抱き上げ、背中を叩く・揺さぶるなどして取り除く
- 大型犬は横向きに寝かせ、肋骨の下を押し出すように圧迫する
※難しい場合はけっして無理をせず、獣医師に相談してください。 ※獣医師の指示のもと対処してください。
3.中毒による嘔吐
人間にとっては無害でも、犬が中毒になるものは意外とたくさんあります。愛犬がうっかり口にしないように、危険な食べ物はしっかりと管理しましょう。
①.症状
中毒による嘔吐の主な症状は、下痢やよだれ、意識混濁、けいれん、心臓発作、胃潰瘍などがあげられます。
ネギ科中毒は血尿や貧血、チョコレート中毒は興奮、呼吸の回数が異常に増えることも覚えておきましょう。
重篤な場合は摂取後1時間以内の発症が多くみられますが、食べた日から2~3日後に症状が悪化することもあります。
②.原因
犬にとって有害な食べ物のうち、特に危険な食品は以下の通りです。
日常的に接する機会が多いものばかりですので、よく覚えておきましょう。
- たまねぎ、長ネギ、ニラ、ニンニクなどのネギ類
- じゃがいも、トマトなどナス科の野菜
- アロエ、アジサイなどの観葉植物
- ぶどう、レーズン、スモモ、モモ、ウメ、アンズなどの果物
- キシリトール、チョコレート、ココアなどの食品
そのほか、タバコや人間の薬、殺虫剤なども犬が中毒を起こす原因になります。
薬品類の中毒は、症状が現れるまでの時間が短く、10~60分以内に異変が現れることがほとんどです。
③.対処法
誤飲や中毒に気付いたときは、早急な対処が必要です。犬の様子に関わらず、すぐに動物病院に連絡して指示を仰ぎましょう。
塩水を飲ませて吐かせる方法もありますが、食塩も量を間違えれば、重い中毒を起こす食品です。また、吐かせてはいけない場合もあります。必ず獣医の指導を受けて対処しましょう。
受診の際は、食べた量や詳細な成分が分かるパッケージなどを持参するとスピーディーに適切な治療が受けられます。
特に、チョコレートの場合はカカオの含有量によって中毒の重症度が異なるため、成分の特定が非常に重要です。
4.病気による嘔吐
異物誤飲や中毒のほか、病気による嘔吐も忘れてはなりません。
①.症状
病気が原因の嘔吐は、主に下痢や食欲不振などと一緒に現れます。
また、嘔吐物の色にも注目しましょう。胃炎、胃潰瘍、消化器官の腫瘍などでは茶色・黒色になり、空腹時の嘔吐とは明らかに見た目が異なります。
犬の嘔吐物の状態は、その都度チェックすることが重要です。
②.原因
体調不良による嘔吐は、原因によって一時的なものと長期的なものに分けられます。
- 一時的なもの
ストレス、熱中症、乗り物酔い、胃腸炎、アレルギー症状など - 長期的なもの(疾患)
寄生虫感染、感染症、腫瘍、腎不全、膵炎、腎炎、肝炎、尿毒症、子宮蓄膿症など
③.対処法
嘔吐が見られたら、早めに病院を受診しましょう。正確な検査結果が出るように、嘔吐後は受診まで断水、絶食が必要ですが、脱水症状にならないように半日以内が目安になります。
また、嘔吐物は病気の診断や治療に大きく役立つため、現物を持参するか、難しければ状態をよく観察・撮影して診察に備えると安心です。
<観察ポイント>
- いつ?(空腹時or食後)、回数
- 異物の有無
- 消化状態(形がどのくらいのこっているか)
- 胃液の色(茶色、黒、黄色、透明など)
5.犬の嘔吐に備えるために
犬の嘔吐の原因は、おもちゃや観葉植物、危険な食品や熱中症など、日常の何気ないものに潜んでおり、完璧な対策は難しいものです。
少しでも愛犬のリスクを減らすためには、日頃からおもちゃの種類や状態に気を配り、危険なものはすぐに片付けるなどの努力が必要です。
また、突然起こる誤飲事故に備えて、ペット保険に早めに加入することも大切です。
ペット保険は医療費の補償だけでなく、獣医への電話相談サービスなどがついている保険もあり、かかりつけ病院の休診日や旅先で事故が起こった際も心強い味方になります。
6.まとめ
犬は食べ物の丸飲みや空腹でも吐きやすい動物ですが、誤飲や中毒、病気による危険な嘔吐もあります。
そういった嘔吐は、早急な対応と受診が必要となりますが、間違った対応は愛犬を危険な状態にすることもあります。誤飲や中毒、病気が疑われる場合は、まず動物病院に連絡し獣医の指示を仰ぐようにしてください。
嘔吐の原因は身近なものがほとんどです。危険なものは管理を徹底し、ペット保険で突然の事故と治療に備えましょう。