猫の保険で補償対象外となる病気と飼い主ができること

1.猫の保険で一般的に補償対象外となるもの


猫の保険で、すべての医療費が補償できるわけではありません。


一般的に、検診・予防接種・避妊・去勢といった病気の予防や治療以外にかかる医療費は補償対象外となりますが、主な項目として次のようなものが挙げられます。


  • 告知対象の既住症や先天性異常
  • ワクチン接種で防ぐことができる病気
  • 猫伝染性腹膜炎など保険会社が指定している傷病
  • 予防接種や健康診断など予防に関わる費用
  • 避妊手術や去勢手術
  • 歯科治療
  • 飼い主の過失による事故
  • 自然災害による傷病

詳細は保険会社ごとに異なりますので、事前に約款(やっかん)や重要事項説明書を熟読しておくことが大切です。

 

2.気をつけたい猫の病気


猫は猫下部尿路疾患・慢性腎臓病・甲状腺機能亢進症といった病気にかかりやすく、猫伝染性腹膜炎や猫免疫不全ウイルスといった感染症にも気をつける必要があります。


保険加入前にこれらの病気に罹患すると、加入不可となることが多く、加入できたとしてもこの病気に関する治療は補償対象外となる可能性が非常に高いといえます。(加入後に罹患した場合は、補償対象となる保険もあります。)


愛猫の健康管理のためにも、代表的なこれらの病気の特徴を押さえていきましょう。


病気①.猫下部尿路疾患


猫下部尿路疾患とは「FLUTD」とも呼ばれ、膀胱から尿道に至るまでの尿路に生じるさまざまな病気のことを指しています。


特に膀胱炎と尿路結石(尿石症)はよく見られるものであり、尿道炎・尿道閉塞・尿路感染症などを併発する場合もあります。


猫下部尿路疾患はトイレに行く回数が増え、トイレ以外の場所で粗相をするといった症状が見られるので、飼い主が早めに気づいてあげることが重要です。


また、冬の寒い時期には水分の摂取量が不足する、など泌尿器系疾患のリスクが高まります。


他にも、猫の年齢や性別、去勢や避妊の有無による代謝が影響していると考えられており、室内飼育で運動が不足しているときは注意しましょう。


病気②.慢性腎臓病


慢性腎臓病(腎不全)は、加齢による腎臓機能の低下によって起こる病気であり、高齢の猫によく見られる症状です。


6歳以上の猫に多く見られる疾患であり、猫下部尿路疾患やウイルス性の感染症にかかったことがある場合は、慢性腎臓病のリスクもあります。


慢性腎臓病は早期発見が難しいと言われていますが、愛猫が水をたくさん飲む、尿の量が増えているときには注意が必要です。食欲の減退・体重の低下・毛のツヤがなくなる様子が見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。


病気③.甲状腺機能亢進症


甲状腺機能亢進症は10歳以上の猫によく見られる症状であり、甲状腺が腫れて甲状腺ホルモンが過剰になることで起こる病気です。


代謝が盛んになるため、食欲が増し、体温も上がり、心臓機能も高まり、行動も活発化するため、最近健康になったと誤解されやすく、早期発見が難しいと言われています。


しかし、異常な活性化によって老化を早め、末期になると体重減少、多尿、嘔吐、下痢、筋肉の衰弱、早い心拍などが見られます。


10歳以上の老猫で、食欲があるのに痩せている、気性が荒くなった、異常に甘えるようになった、常に目がぱっちり大きいという場合は、甲状腺機能亢進症が疑われます。健康に見えても念のため受診してみましょう。


病気④.猫伝染性腹膜炎


猫伝染性腹膜炎は「FIP」とも呼ばれ、猫コロナウイルスが体内で突然変異して発症する病気です。突然変異する原因は解明していませんが、年齢が若い猫で、免疫力が低下している場合に発症しやすい傾向にあります。


猫伝染性腹膜炎は体内のあらゆる場所に炎症を起こし、胸水、腹水、発熱、黄疸、目の異常や神経症状など症状も様々です。レントゲン検査・血液検査・エコー検査など全身検査や麻酔が必要になります。


また、猫伝染性腹膜炎には現在根本的な治療がなく、発症から1~2ヶ月でなくなることも珍しくありません。


病気⑤.猫免疫不全ウイルス


猫免疫不全ウイルスは猫エイズとも呼ばれており、猫同士のケンカで噛まれて感染するケースが多いと考えられています。また、母子感染の可能性もあり、感染した母猫から生まれた子猫も罹患していることがあります。


初期症状は発熱、リンパ節の腫れ、下痢などが見られます。免疫力が低下しているため、感染症をおこしても治りにくく、後期になると、口内炎、呼吸器、皮膚疾患が慢性的に現れ、重度の体重減少や貧血など、悪性の腫瘍に進行することもあります。


血液検査で感染の確認ができますが、抗体の形成に時間がかかるため、すぐに感染が分らないこともあります。目安としては、成猫であれば、感染から1ヶ月以上、子猫の場合は生後6ヵ月以上になります。


猫免疫不全ウイルス自体に治療法はなく、現在の疾患に対する治療しかありません。外出によって感染リスクが高まるため、できる限り室内で飼うことが一番の予防になります。

 

3.対象外の病気にならないために飼い主ができること


保険の補償対象外の病気はたいてい重篤な病気ですが、多くの疾患は適切なケアで症状の緩和や予防ができます。


愛猫が元気に過ごすために、飼い主が知っておきたい3つのポイントをご紹介します。


ポイント①.定期的に体調をチェックする


定期的な健康診断はもちろんですが、病気の予防で最も重要なことは、愛猫との毎日のコミュニケーションです。


食事の片づけやトイレの掃除、ブラッシング時の様子など、普段からタイミングを決めて様子を観察することで些細な変化にも意識が向き、愛猫の健康状態をしっかりと把握できます。


また、ウェブサイトなどで猫に関する情報を収集して、かかりやすい病気の把握、最新の医療技術やプレミアムフードなど、愛猫の健康管理について常に考えましょう。


ポイント②.予防接種を欠かさない


室内外の猫であっても、家族や他のペットから感染する可能性もあります。予防接種は定期的に必ず受けましょう。


猫の予防接種は、猫ウイルス性鼻気官炎、猫カリシウイルス感染症や猫汎白血球減少症などの感染症を未然に防いでくれます。


ワクチン接種で予防できる病気を発症すると、保険の対象外となって医療費が補償されないだけでなく、契約更新や新規加入が難しくなる場合もあるので注意しましょう。


ポイント③.保険に早めに加入する


愛猫の日々の健康管理と共に、健康なうちにペット保険に加入することも大切です。


これまでは問題なく元気に過ごしていても、年齢を重ねるにしたがって病気のリスクは高まります。


猫の保険は加入年齢に上限があることに加えて、加入前に告知対象の病気に罹患すると、完治しても、加入不可や一部対象外での加入になる場合もあるので、将来を見据えて早めに保険に加入しましょう。

 

4.保険会社によって補償対象外となる病気は異なる


猫の保険で補償対象外となる傷病は、各保険会社で病気の種類や対応が異なります。


もし、対象となる既往歴があっても1社であきらめず、根気強く探せば見つかる可能性があります。


各保険会社のウェブサイトや資料に目を通して、告知対象となる傷病や補償対象外となる事例を細かく確認しましょう。不明点がある場合には、サポートセンターに相談することも大切です。

 

5.まとめ


猫の保険では、予防処置や出産に関連する医療費の他に、補償対象外となる病気もあります。猫がかかりやすい病気について知識を深め、どのようなケースが保険の補償対象外となるのか把握しておきましょう。


病気や保険のことで疑問がある場合は1人で悩まずに、動物病院や保険会社などのプロに問い合わせ、不安は確実に解消しましょう。