獣医師に聞く、ペットの病気や治療の最新事情。そしてペット保険とは？

お話を伺ったのは、アポロどうぶつ病院院長　杉井太市郎先生

最近、動物病院の待合室などで順番を待っていると、高齢のペットが増えたということを感じる飼い主さんが多いのではないでしょうか。 ペットを家族のように愛し、健康管理意識の高い飼い主さんが増えていることはもちろん、それに伴って医療も格段に進歩したことにより、ペットたちの寿命はひと昔前よりものびています。 アポロどうぶつ病院院長の杉井太市郎先生も、最前線の現場でそのことを実感されているおひとり。 「昔はあきらめざるを得なかった病気でも、治療の高度化により選択肢の幅は広がっています。一方、白内障や関節症など高齢化に伴う病気の治療も増えてきており、犬も猫も7～8歳を過ぎたあたりからは、定期的に健康診断をしていただくことをおすすめしたいです。どんな病気でも初期から治療することが結局回復の早さにつながりますから」（杉井先生）

高齢化による病気以外でも、ペットたちの健康状態やかかりやすい疾患などは時代により変化しているそう。獣医師としてのキャリアが15年の杉井先生にとっても、研修医だった頃と今では、 犬やネコの疾患や怪我の傾向がかなり変わったそうです。 「室内飼いが増えたことで、家の周囲での不測の怪我などはずいぶん減りました。たとえば猫同士の激しい喧嘩による怪我などは、ほとんどなくなりましたね。それにフードの進化により、毛球症（毛玉が消化器官にたまってしまう病気）なども減少しています。 一方、犬も猫もハウスダストが原因と見られるアレルギーなどは、かなり増加しています。 また、集合住宅に住まわれる方が増えたので、ベランダからの猫の落下事故なども少なくありません。小型犬が増えたことにより、前足の骨折事故なども多くみられます。骨が華奢な犬種ですと、ベッドから飛び降りるなど、ちょっとしたことで室内でも骨折してしまったりするんです」（杉井先生） また、犬と旅行やアウトドアを楽しむようなライフスタイルも増えていることにより、出先での思わぬ怪我なども多いとか。

「ペット保険に加入するかどうか迷っている飼い主さんに相談を受けることは度々あります。ペットの病気や怪我への備えとして、たとえば治療費を積み立てておく方法もあるし、保険に加入する方法もある。そこは飼い主さんの考え方次第ですし、獣医師として『こうすべき』とは言えません。よくある誤解としては、“病気や怪我になってから入ればいいのでは”というもの。ほとんどのペット保険では、加入以前にかかった病気には保険が適用されないので、病気にかかってからでは遅いのです」（杉井先生） そういう意味では、もし加入を検討するのであれば元気で若いうちに考えた方がいいと言えそうですね。そして治療費が多額になりやすいケースを伺うと、やはり代表的なものは「癌」だそう。 「手術、抗がん剤治療、放射線治療など病状に応じて治療方法は様々ですし、複数の治療を併用したり、予後によっては別の治療に切り替えることもあります。これがたとえば骨折の治療などであれば、手術とその後の治療などの治療費も想定しやすいのですが、癌などの疾患ですと予想がつきにくいこともあり、検査も度々必要となります。病気のペットに対してどんな治療をするか、それはあくまで飼い主さんの価値観によるものですし、その判断をサポートすべく、獣医師としてはあらゆる選択肢を示し、じっくり話し合うことが大切だと思っています。ペット保険に加入していることにより、少なくとも経済的には気持ちの余裕をもって治療方針を決められるのであれば、保険の意義は充分あるのではないかと思います」（杉井先生） また、とりわけ高齢になると心臓病や甲状腺の疾患、関節炎など「一生付き合っていかなければならない疾患」にもかかりがちで、そういった観点からも治療にどの程度の時間と費用を割くかは、飼い主としてきちんと考えていかなければならない問題だと感じました。 最後に、動物病院との付き合い方について、杉井先生にアドバイスを頂きました。 「ちょっとしたことでも、気軽にクリニックに訪れていただきたいです。早期発見、早期治療は疾患を悪化させないことはもちろん、治療費の面でも結局安く済むということが多いんです。それだけではなく、犬でも猫でもできるだけクリニックに来ることに慣れてもらえれば、飼い主さんの精神的負担感も減りますし、いざというときの治療において、ペットたちのストレスも少なくなりますから。獣医師とのコミュニケーションを深めることによって、よりよい治療や健康管理にもつながります」（杉井先生）

アポロどうぶつ病院 埼玉県志木市幸町３-４-10 tel）048-471-1287 http://apollo-ah.com/index.html