<前編>現役FPが語る! 自転車事故に遭って実感した、初動対応のポイント

お話を伺った方

株式会社 優益FPオフィス 代表取締役 佐藤益弘 様

はじめに

前回の記事では、自らの事故経験を通して感じた自転車保険の価値、リスクマネージメントの発想からの自転車保険の活用についてお話しをさせて頂きました。 https://media.au-sonpo.co.jp/bicycle/cwwlO 取材時点で未だリハビリ中なので、気が早いのですが、思い起こせば、事故発生直後の初動対応がしっかりできたことで、その後の対応もスムーズにできたと感じています。 ただ、実際にいろいろ苦労した点もあったので、今回はこの「初動対応の重要性」についてお伝えします。

まずは、私の遭った自転車事故の話

2019年1月23日早朝、人通りの少ない自宅近くの道路で自転車同士の衝突事故に遭い、転倒、怪我をしました。

事故現場(後日撮影) 「まさか、自分が・・・」そう思いながらも立ち上がろうとしたのですが、左足が地に着かない。何とか安全な場所に自転車も含めて移動し、座りながら相手の方と連絡先の交換。その場を離れずにいてくれたことに感謝しました。お互いに認識している事故状況や怪我の状況、保険加入の有無などを話しながら、できれば話を大きくしたくなかったので、痛みが消えるのを5分ほど待ち、何もなければその場で示談してしまおうと考えていました。ただ、寒いせいか?足の感覚が全くない。相手の方の承諾を得て、人生初の110番、119番をしました。とても緊張しました。 5分前後して警察がやって来て、事情聴取&現場検証が始まりました。「これが刑事ドラマで見る、アレね」と痛みを感じながらも多少緊張感もあったのですが、極めて事務的な流れで・・・認識していることだけを淡々とお応えしました。その時はスマホと少額の小銭入れしか手元になかったので、自分自身の身分証明をするのにちょっと苦労しました。 救急車が到着したので、救急隊員のサポートを受けながら車内に移動し、搬送先を探しながら、事情聴取が続き、最後に警察の方から刑事訴追の説明を受け、サインをしました。実はこの段階で初めて、自分自身が被害者なのだと認識しました。相手の方に怪我がないとわかったので、ホッとしたのを覚えています。 人生初の救急車で、搬送先の病院が中々決まらない、いわゆるたらい回しとはこういうことか?という経験もしながら、結局、自宅からは離れた事務所近くのK病院に搬送されることになりました。正直、知らない病院でしたが、後日確認した所、歴史のある地元では有名な病院だったようで、運の強さに感謝しました。 救急車で運ばれる中で、救急隊員の方に許可を貰い、スマホで妻と最も信頼しているビジネスパートナーにだけ連絡を取りました。痛みが増してきたので、気を紛らわすために、携帯で連絡を取る以外は、救急隊員の方にいろいろなことを聞いていたと思います。 病院に到着し、「アキレス腱断裂」という診断を受け、その後の治療の話になりました。私が確認したのは、完治までの想定時間と治療費用の話です(職業病ですね:苦笑)。主治医になるY先生も苦笑いしていました。ただ、これが初動ではとても大切なことです。示談交渉時の基準になるだけでなく、元の生活に戻るまでに必要な時間と費用を把握することで不安が和らぎ、前向きな気持ちになることもできました。 「アキレス腱断裂で済んで良かった…」と思ったのも束の間、手術をして2週間は安静、その後ギプス(キャスト)で2週間固定し、リハビリを開始できるのは手術の1ヵ月後。元のように歩けるようになるまで手術後5ヵ月・・・。時間もお金もかなり掛かると知り、「おぉ~思っている以上に重傷だ」と実感したのはこの時でした(苦笑)。 逆に事の重大さに自分が気付かずにいたからこそ、冷静な対応ができていたかもしれません。急に大きな不安が襲ってきたのを覚えています。この時初めて時間を確認したのですが、事故から既に2時間以上が経過していました。

事故発生後の手続きは想像以上に多い!

事故当日はベッドに空きがないということで翌日入院となり、一旦自宅に戻ることになりました。妻とビジネスパートナーが迎えに来てくれたので、今後のことについていろいろ話しながら帰宅しましたが、心身共に不安で整理が付かず、あまりよく考えられませんでした。毎日使っていたマンションの登り階段は、今までで一番辛く長く感じました。 ただ、不幸中の幸いか?後々になって考えると、この一時帰宅がとても貴重な時間でした。翌日から2週間以上入院することをイメージし、入院するまでのこの24時間で善後策や今後の対応を考え、準備をすることができたからです。 私は小さいながらも会社の代表をしています。会社員ではありませんから自分の稼ぎ=会社の稼ぎとなり、生活保障もありません。ある程度の貯えはあるとしても、大きな不安が募りました。実際、事故当日は遠方に出張予定だったので、仕事面で関係者にリカバーを依頼する必要もありました。結果として、失ってしまった仕事=収入も多々ありました。 ただ、嘆いてばかりいても先に進めないので、こうなった以上、目の前のことに1つ1つ対処していくしかありません。前向きな考え方に切り替えて、行動しようと決めました。 相手の方も、故意で事故を起こしたわけではありませんから災難です。年配の方だったので、怪我の心配をしましたが、幸い何もなかったようでホッとしました。(後から聞いた話ですが、相手の方は事故直後、ただただ後悔しかなく、いろいろな事が手に付かない状況だったそうです。なんだか申し訳ない気分になりました。) 私自身は自転車保険に加入していましたが、相手の方が特約も含め、自転車関連の保険に未加入だったため、示談交渉は慎重・丁寧に進めねばと思いました。経済的に大きな負担を掛けてしまうのは本意ではなかったからです。 上記のようなことを考えつつ、保険会社に連絡したり、知人に連絡したり、いろいろ調べているうちに、警察関係、病院関係、健康保険関係、損害保険関係など思った以上にいろいろな手続きが必要なことが分かりました。体のケア以外にしなければいけないことがたくさんあることを知り・・・正直、気が重くなりました。

その後作成した書類(一部) 後編では、実際に事故を経験して感じた、知識と必要な行動のギャップについて、ご紹介させていただきます。 後編はこちら https://media.au-sonpo.co.jp/bicycle/xOqC2