<後編>現役FPが語る! 自転車事故に遭って実感した、初動対応のポイント

※この記事は後編です。前編はこちら https://media.au-sonpo.co.jp/bicycle/J7cFe

経験して感じた知識と現実のギャップ

私自身FPという職業柄、健康保険に関する知識を多少持っていたので、上手く進んだ部分もあります。ただ、知識と現実のギャップを思い知ったことも多々ありました。 簡略化していますが、私の事故ケースを元に、時系列でどのような行動をしたのか?示したのが、以下の表です。

 相互に関連する書類もあるので、中々思い通りに進まないことも多かったです。 事故の後、最初に自宅に戻ってやったのは、当日の出張の取り止めなど仕事関係の事柄でした。 保険についても、入院してしまう前に第一報を入れる必要があると思いましたので、自分の加入している自転車保険の内容、どのような手続きをすれば良いのかをHPで確認した後、au損保さんに連絡を取りました。 警察との手続きは、極めて形式的だと感じました。現場での事情聴取&現場検証と刑事訴追に関する説明&確認で基本的に終わりです。後日、健康保険や損害保険の手続きで「事故証明」が必要になったので、その発行申請は行いました。当然ですが、事故証明は通報しなければ出ません。初動として必須だと感じるのは、例え、相手の方が現場から居なくなったとしても、小さな事故であっても、必ず110番し、証拠を残しておくことです。 病院と健康保険の手続きは連動するので一緒にお伝えします。病院に関しては救急搬送時に入院することを決めたので、清算は退院時に一括清算という流れになりました。ただ、当然ですが一定の前金を納める必要はあります。 その際、最も驚いたのが、交通事故の場合は「原則、健康保険は使えない!」と言われたことです。これは第三者(他人)等の行為による傷病(事故)なので、医療費も本来は加害者が負担すべき費用だからです。ただ、交通事故の場合、加害者がわからなかったり、交渉が長期化することも予想されます。ですから、一般的に損害賠償請求権を被害者から健康保険の運営者が引き継ぐ制度を利用する(健康保険法57条)ことで、利用できるようにしています。具体的には健康保険の運営者から了解を貰い、「第三者行為による傷病届」を提出すれば利用できます。ややっこしいですね。 私の場合は、事故当日に健康保険協会から了解を貰い、書類は後日提出することで、利用できることになり、同時に高額療養費の申請も行いました。 手術や入院の説明、その後の治療方法、健康保険の利用の可否等に関してわからないことは早い段階で病院にドンドン確認し、疑問点はなくしておきましょう。不安があると前に進めません。 1週間前後してから、必要書類として「第三者(他人)等の行為による傷病(事故)届」の書類が一式送られてきました。この作成がとても面倒でした。例えば、事故の状況を詳細に示したり、相手の方の署名を貰ったり、示談交渉の状況を記載する必要があります。思い出そうと思っても思い出せないこともありますし、思い出したくないこともあります。 私は普段日記など付けないのですが、今回は付けていました。できれば早いうちにスマホのメモ機能などを使い、忘れないよう事故内容を残しておきましょう。また、警察に発行してもらった事故証明を添付する必要もありました。 損害保険会社(au損保)の手続きは至ってシンプルでした。事故の連絡をした後に折り返しで内容確認の電話があり、数日で必要書類が送られてきました。今回は保険金がかなりの額になったので病院の診断書が必要となり、診断書の発行に時間が掛かったため、提出するのに時間がかかりましたが、提出後の対応も早く、書類提出から3~4日で入金されました。こういうときはやはり手間が掛からず、スピーディーに対応して貰えるのが一番ですね。 最後に、事故の相手の方(加害者)との示談交渉についてです。 まず、事故の相手の方は極めて誠実な方で、代理人として現実的な判断のできるお子さまが対応してくれたので助かりました。ただ、賠償責任保険に加入されていなかったため、非常に気を遣いました。被害者である私がプロ(FP)で、相手の方は素人という構図なので、後日「悪徳FP!」など風評被害を受けるのは御免被りたかったのです(笑)。お互いに納得できるような示談をしたかったので、しっかりとした根拠(客観的な事実や数値)に基づいて交渉を行いました。 後日、この示談交渉についてはお伝えできる機会もあるかもしれません。

今後の話…自転車保険は早めに加入すべき!

恐らく令和元年(2019年)中には結論が出ると思いますが、平成31年(2019年)1月より国土交通省にて「自転車の運行による損害賠償保障制度のあり方等に関する検討会」が立ち上がっています。 以下は私見ですが、エコ社会の実現のためにも自転車利用を積極推進したい行政サイドの思い 、前回記事でお伝えした「高額な賠償責任」の問題など もあるので、令和2年(2020年)末までには都道府県単位の条例にて「自転車保険(自賠責)の義務化」が進むのは当然の流れだと感じています。 現時点で、賠償責任保険や傷害保険は比較的安価ですが、今後の事故の発生状況によっては 保険料がこれから上がっていく可能性もあると 思います。 もし、加入を検討されているのであれば、安価なうちに、できるだけ長期で加入できる自転車保険に加入された方が良いかもしれません。 自動車保険の場合は、強制加入保険があるので、他人に迷惑を掛けた際の(人的な)最低限の「補償」が備わっていますが、現時点で自転車保険にはありません。 万が一事故を起こしてしまった場合の賠償責任に対する備えは元より、自分の怪我に対する備えも必要なので、必ず自転車保険には加入しましょう。

まとめ…自転車事故の初動対応のポイント

①【事故直後】必ず110番し、証拠を残しておく  ⇒相手の方が現場から居なくなったとしても、小さな事故であっても、110番しましょう。 ②【病院】元の生活に戻るまでに必要な時間と費用を確認する  ⇒客観的な状況を認識することで不安が和らぎ、前向きな気持ちになれます。示談交渉時の基準にもなります。 ③【手続き】病院と健康保険の手続きについては、不安が残らないよう疑問点はなくしておく  ⇒不慣れな手続きに戸惑う方も多いはず。疑問点は早めに解消して、心身の健康を取り戻すことに注力できる状況を作りましょう。 ④【随時】事故内容や示談交渉の状況などは、記録しておく  ⇒手続きを進める中で、役に立つことがあります。

お話を伺った方

株式会社 優益FPオフィス 代表取締役 佐藤益弘 様