<前編>現役FPが語る! 事故に遭って実感した、自転車保険の価値

お話を伺った方

株式会社 優益FPオフィス 代表取締役 佐藤益弘 様

はじめに

2019年1月23日の早朝、自宅近くの道路で自転車同士の衝突事故に遭いました。 幸い相手の方に怪我はありませんでしたが、被害者となった私はアキレス腱が切れてしまい、入院と手術で16日間、自宅療養で14日間の時間を費やすことになりました。 事故及びその後の経緯の詳細についてはこちらの記事をご覧ください https://media.au-sonpo.co.jp/bicycle/J7cFe FP(ファイナンシャルプランナー)という仕事柄、生活上のリスクについては普段からお客様にお伝えする立場ですが、そんな私でも実際に事故に遭ってみて気づいたことが多々ありました。 インターネット上にある自転車事故に関する情報は、死亡事故など高額な賠償や訴訟関連の事柄が多く、発生頻度が高いはずの傷害事故に関する情報はほとんどありません。 今回、無事に示談もまとまり、事故の相手方のご厚意もあり、実際の経験談をお伝えできることになりました。自転車保険の加入を検討している皆さんのお役に立てれば幸いに想います。

事故に遭って知った自転車事故の現実

今回の事故で私は被害者の立場でしたが、被害者、加害者のどちらになっても精神的・経済的なマイナスが大きく、悲劇だと感じました。 とはいえ事故が起きてしまった以上は、嘆いてばかりいても仕方なく、まず今回の事故をきっかけに自転車事故について調べてみることにしました。インターネットで自転車事故に関する調査資料を調べてみると、いろいろな事がわかりました。 正直、本当?と感じた点もあるのですが、自転車関連事故件数の推移を見てみると、自転車関連事故は年々減少しているようです。実際は警察に通報せずに泣き寝入りしている方も多いような気がしますが、それでも年間90,000件、6分に1件のペースで発生しています。私のような「自転車相互」の事故は「自転車対歩行者」事故の件数より多く、平成27年からじわじわ増加しています。

図表:国土交通省「自転車の運行による損害賠償保障制度のあり方等に関する検討会(2019年1月11日)」資料2:自転車事故の損害賠償に係る現状について(P1)より また、第1当事者(加害者)の属性については16~19歳が最も多く、未成年者が全体の38%を占めています。通学などで利用するケースも多いので、発生確率が高くなるということでしょうか? 個人的な意見ですが、超高齢社会が進展している中で60歳以上の方や電動アシストに乗っている主婦の方が関わる事故はこれから増加すると感じます。

図表:国土交通省「自転車の運行による損害賠償保障制度のあり方等に関する検討会(2019年1月11日)」資料2:自転車事故の損害賠償に係る現状について(P5)より 私の場合は怪我だったのでさほど大きな賠償額(示談額)にはなりませんでしたが、死亡や障がいが残る事故になると高額な賠償責任になるケースもあり、加害者が未成年の場合は本人だけでなく家族も一生、経済的な負担を引きずることになりそうです。

図表:国土交通省「自転車の運行による損害賠償保障制度のあり方等に関する検討会(2019年1月11日)」資料2:自転車事故の損害賠償に係る現状について(P7)より この様な状況の下、各自治体では条例により自転車保険(賠償責任保険)の加入義務化の動きが進んでいます。ただし罰則規定がないため、義務化地域でも統計上加入していない方が30%程度(※)いらっしゃいます。 ※出典:国土交通省「自転車の運行による損害賠償保障制度のあり方等に関する検討会(2019年1月11日)」資料2:自転車事故の損害賠償に係る現状について(P11) 親には子供に対する監督義務責任がありますから、今後、子供が保険に未加入の場合、この責任を果たしていないと判断されるケースも出てくることでしょう。

保険の経済的・精神的効用

私自身のケースで言うと、相手の方が保険に未加入だったため、直接お話しして示談交渉をせねばならず、とても気を使いました。私は保険に加入していたためau損保の方に示談をお願いすることもできたのですが、今回は勉強もかねて自分で行いました。 ですが、相手の方はもっと大変だったと思います。間に入ってくれる保険会社もおらず、相手はお金のプロであるFP。自分で示談をまとめなければならないことに対するプレッシャー、ストレスたるや相当なものだったことでしょう。 相手方との示談以外にも、事故関係(警察)、医療費関係(健康保険)、治療関係(病院)、保険金関係(損害保険会社)など、思った以上にいろいろな書類作成・手続きをしなければなりませんでした。 正直、とても億劫に感じましたし、FPといっても保険分野は私の専門外なので、身近な相談先としてau損保の担当者の方が相談に乗ってくれたことは、事故の精神的負担を和らげてくれました。保険は人を経済的に支えるものですが、身体的にも参っている中でプロが自分を支えてくれるという精神的効用(安心感)もあるのだと感じました(示談をお願いしていれば、もっとありがたみを感じたかもしれません)。

事故後、冷静でいられた理由

事故発生後、妻や家族だけでなく、警察の方や病院の方からも「とても落ち着いていますね」と言われました。確かに今思えば、とても冷静に行動できていたと思います。 なぜ、そうできたのか?今思い返してみると、正反対の2つの理由が思い浮かびます。 1つは、FPという職業柄、ある程度、「事故が起きたらこうすれば良い」という事故対応の基礎知識を持っていたということです。 イメージもできていたので、すぐに行動できました。 もう1つはその逆で、不覚にも事の重大さに気付いていなかったということです。「アキレス腱断裂」と診断された際も、「そうか・・・頭とかは大丈夫なのね?」と軽い気持ちで考えていましたが、執筆現在もリハビリなどで苦労はしていますし、精神的、経済的な負荷は想定以上でした。 知識を持っていてもいざというときに使えなければ意味がありません。しっかり知識を持っていても誤った情報を得れば誤った判断をしてしまいますし、客観的な意見を貰える=セカンドオピニオンを貰える方がいると良いですね。私の場合はそれがau損保さんでした。 次回は、リスクマネージメントの重要性について、実感を踏まえてお話しします。