ミニベロの起源とブーム
生みの親「アレックス・モールトン」
ミニベロとはタイヤ径の小さい自転車の総称で、mini(小さい) vélo(自転車)というフランス語です。 現代のミニベロの起源は、1960年代に英国のアレックス・モールトン博士によって発明された小径車だと言われています。 当時は26、28インチ径ホイールが一般的でしたが、乗り降りのしにくさや使い勝手の悪さなど多くの課題を抱えていました。そこで、ゴム会社の技術者・経営者として手腕を発揮していたモールトン氏は小径車の開発に乗り出し、1960年代初頭に16、17インチ径ホイールの「モールトン自転車」が誕生しました。
▲自転車の生産工場を兼ねたモールトン博士の自宅
空気抵抗の少ない小径ホイールと転がり抵抗の少ない高圧タイヤ、快適な走行を可能とするフルサスペンション装備などの機能性と計算し尽くされたデザイン性の高さは、まさにミニベロ界の頂点。世界中には”モールトニア”と呼ばれる愛好家が多く存在します。
▲最高級モデルAlex Moulton Double Pylon(アレックス モールトン ダブルパイロン) 。フレームキット¥2,030,400-(税込)。
「ゆるキャン△」でミニベロブーム到来
長い歴史と熱意ある技術者の手によって生まれたミニベロですが、日本では人気コミック「ゆるキャン△」によってミニベロブームに拍車がかかっています。 「ゆるキャン△」とは、山梨県周辺を舞台に女子高生の志摩リンや各務原なでしこが、キャンプやアウトドアを自分たちの身の丈に合った範囲でゆる〜く楽しむ日常を描いたものです。 主人公たちがミニベロにキャンプグッズを積んで走るシーンが描かれていたことから、その姿を追いかけてミニベロに乗り始めた人もいたようです。
ミニベロのメリットは?
年代や性別を問わず愛されているミニベロですが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。自身のライフスタイルや乗り方に条件は合うのか照らし合わせてみましょう。
コンパクト収納が可能
一般的な自転車よりもタイヤが小さい分、駐輪や収納のスペースを抑えることができます。駐輪スペースが確保できないマンションやオフィスでも、折り畳み式のミニベロなら屋内に保管することができ、盗難のリスクを抑えることも可能です。
小回りが利くので街乗りに最適
都心部では道路が狭く自転車で走りにくいと感じることが多々ありますが、ミニベロは車輪が小さいことで小回りが利き、フットワークを軽くしてくれます。電車や車に一緒に乗り、旅先でサイクリングに挑戦するのにも苦にならないサイズ感です。
身長が小さくても身体にフィットする
身長が小さい方や女性でも「ミニベロなら身体に合う!」という話をよく耳にします。自分の身長に合わない自転車で走ると身体への負担が大きくなり疲れやすくなるため、今乗っている自転車のサイズが合わないと感じている方はミニベロに挑戦してみると良いかもしれません。
購入時のポイント
ここからはミニベロの購入時に押さえておきたいポイントを解説します。
形状:折り畳み式は屋内収納も可能
ミニベロには、折り畳み式のものが多く販売されています。折り畳めることで「収納」や「持ち運び」にとても便利です。自転車を置くスペースを確保できない方や輪行して旅先でサイクリングを楽しみたい方におすすめです。
一方、折り畳みタイプは、部品や機能が多いため「意外に重い」「メンテナンスに手間がかかる」「段差などに弱い」というデメリットも挙げられます。 自身の生活スタイルや用途に合わせて、折り畳みにするか否かを購入の前に検討しておきましょう。
タイヤの大きさ:20インチは走行性高め
ミニベロのタイヤのサイズは20インチが一般的です。20インチのタイヤには、やや小さめの「406(HE)」と「451(WO)」という2つの規格があります。406は太いタイヤ、451は細めのタイヤが多く、同じ20インチでもそれぞれタイヤとチューブに互換性がないので注意が必要です。
収納スペースが狭い場合などは18インチ以下などの選択肢もありますが、小さいサイズだと段差や凸凹道に弱かったりスピードが出にくいというデメリットもあります。試乗をして乗り心地を確かめることが大切です。
ギア:8段以上でスピード維持
タイヤが小さいからと言って前に進みにくいというわけではありません。ホイール径が小さくてもひと漕ぎで進む距離が長ければ、回転数を抑えることができます。 そのひと漕ぎの距離はギア比によって変わります。実は、ミニベロにも変速機を搭載しているタイプがあり、一般的な自転車と同じようにギア比を変えながら走行することができます。ギアは最低でも7段、可能であれば8段以上のものを選べば、ママチャリと比べても遜色なく走行することが可能です。 ミニベロはスピードが出ないと思っていた方はギア比に注目してみてください。
価格:5万円以上がおすすめ
多くのスポーツバイクがそうであるように、ミニベロの価格も1,2万円で買えるものから200万円ほどする高級品まで様々です。 ここで注意したいのが、自転車は値段相応であるということ。価格が低いものは価格相応に作られているので、フレームの耐久性や各パーツの性能が低いことが考えられます。特に折り畳み式のミニベロは部品が多く、安全性を保つためには各パーツに一定の強度と性能が必要になります。 専門家によると最低5万円前後のものを選べば大丈夫とのこと。あまり予算がない場合でもお店の方に相談をしながら安全性の高いものを選ぶようにしましょう。
チャイルドシートはNG
子乗せ用に設計されていないミニベロにチャイルドシートを付けることはおすすめできません。自転車から降りた時に後ろ荷重になってしまって転倒したり、フレームが荷重に耐えきれず破損する可能性があります。 チャイルドシートを付けることを検討している場合は、専用の電動アシスト自転車などがおすすめです。
試乗はマスト
自転車はネットで購入することもできますが、やはり試乗をしてから購入するのが良いでしょう。メーカーごとにハンドルまでの距離、サドルの座り心地、漕ぎ出しの軽快さなど、あらゆる面で違いを感じます。 また、実物を見たら色味や質感が想像と違った。というケースも多々あります。生活の相棒になるかもしれない、マイバイク。店頭で一目惚れして決めたという人の方が、長く大切に乗り続けられるという話も珍しくありません。ぜひ一度、店頭に見に行ってみましょう。
ミニベロを中心に展開するメーカー
FUJI HELION
FUJIの定番ミニベロ「ヘリオン」。細身なクロモリフレームやフラットハンドル、スキンサイドタイヤなどが上品でクラシカルな印象を与えます。カラーは街中に馴染むレッドとネイビーの2色展開。 価格(税別):¥66,000 カラー:Navy, Brilliant Red 重量:10.0kg ホイールサイズ:20inch 変速段数:8speed 折り畳みサイズ:44cm, 50cm, 55cm
FUJI HELION R
FUJIのスポーツミニベロ「ヘリオンR」。洗練された美しいクロモリフレームとロードバイクに引けを取らない走行性が特徴です。44~55cmのフレームサイズ展開で、体型を選ばずにどんな方でも快適に走ることができます。 価格(税別):¥89,000 カラー:Matte Black, Mint, Silver 重量:10.2kg ホイールサイズ:20inch 変速段数:8speed 折り畳みサイズ:44cm, 50cm, 55cm
Daytona DE01S
電動アシスト付き自転車で有名なDaytonaの「DE01S」。ミニベロのコンパクトさを維持しながら、電動アシストのパワーによりきつい坂道などもスムーズに走ることができます。基本モデルのDE01や最上級グレードのDE01X等、他のラインナップも展開されています。 価格(税別):¥185,000 カラー:ダークグリーンメタリック、パールホワイト、オレンジメタリック、ブルーブラックメタリック 重量:16.1kg ホイールサイズ:20inch 変速段数:10speed 折り畳みサイズ:W 865mm x H 685mm x D 385mm
BROMPTON M6L
英国生まれの折り畳みミニベロ「BROMPTON」。80年代から変わらぬスタイルで作られており、イギリス本国を始めとする世界中に根強いファンのいるブランドです。組み立て・折り畳みは10数秒ほどで完了しそのままコロコロと転がして運ぶことも可能。洗練されたフォルム、利便性、走行性の高さなど、その完成度の高さから「一生モノの自転車」などと言われます。 価格(税別):¥190,000円~ カラー:ブラック、レッド/ブラック、グリーン/ブラック、レッド、グリーン、テンペストブルー、ライムグリーン、ラグーンブルー、パピルスホワイト、ホットピンク、ローラッカー、フレイムラッカー、パープルメタリック 重量:11.8kg ホイールサイズ:16inch 変速段数:6speed(内装3段x外装2段) 折り畳みサイズ:W 585mm x H 580mm x D 300mm ※価格は記事公開時(2018年11月)の情報です。
まとめ
カジュアルでキュートな見た目には意外なほど、職人のこだわりや技術力が生かされているミニベロ。お気に入りの一台を見つけることができば自転車ライフが格段に充実したものになるはずです。ぜひ次の一台にミニベロはいかがでしょうか?